生涯を楽しむための動き方

理学療法士による臨床・生活・予防・介護・子育てに役立つ身体の動きに関する情報がここにある

転倒予防にはペリパーソナルスペースを拡大させるべき

皆様、ペリパーソナルスペースという言葉を聞いたことがありますか?

我々、理学療法士にとって、ペリパーソナルスペースが大変重要になってきます。

ご存じない方は、お付き合い下さい。

下のスライドをご覧下さい。

 

f:id:kenkouPT:20210221003232p:plain

ペリパーソナルスペース

 peripersonal space

ペリパーソナルスペース

(上図の青のスペース)は、

身体を取り巻く、腕が届く範囲のこの目に見えない空間体積であります。

また、バットや車、帽子などを身に着けた時は、

それが身体の一部となるため、その先までがペリパーソナルスペースとなります。

 

日常で歩いている時、無意識に足の下の石をまたいだり、よけたりしています。

脳は常に空間をモニターしながら高速に処理して運動をしているのです。

この身体周囲で脳が認識可能な手の届く範囲の空間を

ペリパーソナルスペースと呼びます。

 

f:id:kenkouPT:20210223014409p:plain

 
サッカー選手は、このペリパーソナルスペースが大きいと言われており、

野球選手はバットの先端

テニス選手はラケットの先端

にまでペリパーソナルを延長できると言われています。

パフォーマンスが高い選手ほど、身体周囲で脳が認識可能な手の届く範囲の空間である

ペリパーソナルスペースは拡大していると言われています。

 

ここで、高齢者をみてみましょう。

我々が相手する方は、転倒して骨折した後の方や、

ふらふらしていて転倒しそうな方、痛みにより歩きにくい方が多いです。

ロコモ・フレイルの方でも言えます。

 

f:id:kenkouPT:20210223014353p:plain

 

上のスライドのように、

転倒した方、しそうな方、骨折した方、

ロコモ・フレイルの方の

ペリパーソナルスペースをみてみると、

ペリパーソナルスペースが狭小化していると言えます。

 

ですから、理学療法士として、

どうしていかなければいけないかというと、

このペリパーソナルスペースを拡大させるように介入していかなければなりません。

 

ペリパーソナルスペース拡大なしに転倒は防げませんし、

ロコモ・フレイルの改善にはなりません。

 

私の場合、初期評価をまずは徹底的に行い、

その結果を踏まえて、

積極的にペリパーソナルスペースを拡大させるように介入します。

 

これはベッドで寝て脚の運動をしていても変わりません。

スクワットしていても変わりません。

安全なことばかり、やっていても変わりません。

 

ボール投げだったり、

サッカーだったり、

ボール打ち(野球)だったり、

ゴルフだったり、

2重課題、3重課題下での運動だったり…

とにかく積極的に介入していきます

 

一番いいことは、その患者さんが若い時にやったことのあることから、

行っていきます。

まずは、できていたあの頃を思い出して、動作として復活させていきます

 

ボール投げ・ボールとりなんかは、誰しもがやったことがあるはずです。

実際に臨床で行っていますが、

20~40年ぶりにやったとか言う方ばかりです

 

そんなにもやっていない期間が長ければ、

やはりペリパーソナルスペースは狭小化してしまいますよね。

 

そんな狭小化した状態で、日常生活を行っていたわけです。

自分が精いっぱい、立つのが精いっぱい…

こんな精いっぱいの状態では、やはり転びやすくなります

自信がなくて、怖くて怖くてたまらなくなりますね…

 

ボール投げ・ボールとりも行っていくと、すぐに上手になります。

ただ、大事なことはボール投げ・ボールとりを上手くしたいわけではありません。

上手くなった結果的に、ペリパーソナルスペースが拡大し、

歩行が一気に向上していくことが多々あります。

 

次に、

ボール投げ・ボールとりが上手くなり、ペリパーソナルスペースが拡大し、

歩行が向上したなと思ったら、

棒やラケットを持ってもらい、

棒やラケットでボールを当ててもらいます

 

考えてみてください。

棒やラケットには感覚がありませんよね。

けども持ったことで自分の身体の一部になるのです。

なんとなく感じられるようになってくるのです。

この棒やラケットに当てられるようになったら、

これまた、さらにペリパーソナルスペースが拡大していきます。

この頃には、下を向くことなく、

堂々たる歩き方になっていきます。

しかも無意識的にです。

 

皆様も何気なく、ボール投げとかやっていると思いますが、

このペリパーソナルスペースを拡大しようという頭でやっている方は、

少ないのではないのでしょうか?

 

最後に注意ですが、

転倒しない運動機能にするには、

ペリパーソナルスペースを拡大させることは必須です。

ただ、拡大させるためのアプローチは転倒リスクが伴います。

適切な評価と、介入時のハンドリング、転倒リスクを考えてアプローチしましょう!

 

そんなペリパーソナルスペースのことが書いてある著書です。

理学療法士の考え方にとって、大変参考になるので、是非一読下さい。

プライバシーポリシー お問い合わせ